2023年10月4日から10月13日の間、ドイツに出張してきました。
この期間に学んだことを整理し記録するため、ブログを書こうと思います。まずはJAG-FoSについて。
JAG-FoSへの参加(10月5日〜10月8日)
Japan, America, Germany Frontier of Science Symposium (JAG-FoS)というシンポジウムに参加してきました。ドイツの東側に位置するドレスデンという都市で開催され、日本、アメリカ、ドイツの3カ国から約70人の科学者が参加していました。普段私は植物系もしくは生物系の学会に参加しているのですが、本シンポジウムは通常の学会と少し毛色が違っていました。生物学だけでなく、環境科学、数学、宇宙物理学、材料化学、社会科学という全く違う6分野からの参加者があり、3日間ホテルに缶詰で互いを知り合うという合宿形式。各分野から3人のスピーカーがそれぞれ20分のトークを行い、その後3人にまとめて1時間質疑を行うというトークセッション。各分野からの参加者達がポスターをはさんでディスカッションするポスターセッション。共同研究の芽を見つけるためのワークショップセッション。コーヒータイムや食事も毎回みんなでとるので、違う分野の人、違う国の人と交流しながら互いの研究分野や研究以外のことについても知り合っていきました。
量子コンピュータやマシンラーニングについては正直単語からわからず、背景知識もほぼ無かったのでプレゼンについていくのは難しかったですが、食事の場でフランクに質問できたため、多少は理解できたように感じています。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は名前しか知らなかったけれど、可視光よりも波長が長い赤外線を使うため、宇宙の塵やガスに吸収されにくくてより遠くまで観測できるということを非常に美しい画像をもとに納得させられながら鑑賞しました。これで息子にも少しは説明できる(笑)。
熱帯地域のサイクロン(台風・竜巻)を予測することはこれまで難しかったけれど、4km四方の解像度でシミュレーションする全球対流許容モデルというものを使うことでより正確に予測できるようになった一方で、扱うデータ量がものすごいことになっているので、早いところ実用的な量子コンピュータの発売が待ち望まれていることも理解できた。
サイエンスも非常に刺激的だったが、なかなかついていくのに必死で、(またマイクに長蛇の列ができていたこともあり)質疑の時間に質問することができなかったのは悔やまれる… どうしても変な質問をしては恥ずかしいと思ってしまう性分で… セッションの一番最初にchairの方が「どんな質問もすばらしいのだから、みんなどんどん質問しよう!」とハードルをだいぶ下げてくれていたにも関わらず… これは大きな反省点。
ポスターセッションでは、聞きにきてくれた環境学者や物理学者に、できるだけ一般的な用語で「栽培化過程の遺伝子選抜」について話すというチャレンジを行いました。まず、遺伝子というもの1つ1つに役割があって、複数の遺伝子の相互作用や下流のネットワークがオンになることで表現型を構成して… という話を積み木の例で話したり。人為選抜の過程については箱の中から色の違うボールを取り出すという例を使ってみたり。普段は考えもしなかった例えを今回ひねり出すことができ、向こうも(きっと?)理解してくれたので、胸をなでおろしました。
食事もドイツビールもとても美味しく、アルコールが入って舌がなめらかに動くようになると、各国でのグラント申請の仕方や評価方法、教育システムの違いなどについて質問しあったりしました。しかし、アルコールが入らないとなかなか英語のディスカッションに割って入るのは難しく、複数人いる場合だとコーヒータイムはにこにこして聞く側に回っているだけのことも多かったので、そこも反省しています…(反省多いなー)
プログラム全体を通して、最先端の(これまで単語としては耳にしたことはあったけれど学んではこなかった)内容を知れたこと、そしてそれを用いた新たな展開を現場で手を動かしている人々から話を聞けたことは非常に刺激的でした。自分の研究と直接共同研究できるというレベルには理解が達していないですが、異なる分野の人々の着眼点やアプローチ法を知れて、自分が普段持っている枠組だけではないということを改めて感じました。
JAG-FoS参加者、集合写真1(ホテルの中で)
JAG-FoS参加者、集合写真2(オペラハウスの前で)
(左)毎日飲んでたピルスナー
(下)女子会で盛り上がった夜
ドレスデンは旧東ドイツで、第二次世界大戦の終盤には爆撃を受けて多くの建物が崩壊したと聞きました。旧市街地にある建物は爆撃を受けた後に残ったものを使い、新しいものと混ぜて再建したものもあり、新しいブロックと煤けたブロックが混在する不思議な見た目でした。JAG-FoSの後、ゲッティンゲンとケルンにも立ち寄ったのですが、ドレスデンはその2つに比べて落ち着いた街並みで昔ながらの?可愛らしい建物やエルベ川という大きな川が流れていて、とても良い雰囲気でした。
他2つの都市への出張についても時間ができたら書こうと思います。
最後に、本出張期間中、娘の面倒をみてくれた夫の両親、夫と息子、そして一時保育先の保育園に感謝いたします。
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