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Kanako

取材をうけて改めてキャリアについて考えた

更新日:2020年8月20日


7月5日にロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞をいただいたことにより、その場に参加されていたLab-Onの久野さんから後日取材を受けました。(Lab-OnのHPはこちら

取材の内容は、私の学部時代 ーなぜ博士課程に進んだのか ーどのようなことを研究しているのか ー今後どうなりたいか ー現在の研究環境をとりまく問題点はなにか ー後輩に向けてのメッセージ、というものでした。

全体の内容については記事をお読みいただきたいと思いますが(記事はこちら)、自分のこれまでとこれからを考えるよい機会となったので、今回思ったことをまとめたいなと思ってこれを書いています。

まずは研究対象に植物を選んだきっかけを思い出しました。もともと食糧問題に関心があって、それを解決するには肉や魚ではなく、より量を生産できる一次生産者としての植物を選ぶのが効率的だろうと考えたこと。しかし、研究を進めていくうちにそれまで知らなかった、植物の持つ、生き残るための「能力」に魅了されていきました。具体的には、植物は動くことができないからこそ芽を出した環境で生き延びていく(適応する)ため、なんらかの対策を打ち出すことができるということ。例えば4 mにもなる深水にあわせて茎を伸ばしたり、塩濃度の高い土壌でも育つ塩類排出機構をもっていたり。神経系をもたない生物に対して人間は軽んじがちですが(思い込みか?!)、植物はちゃんと周囲の環境をセンスして、自分にとって生き難い場所だと感じたら、そこから抜け出す or その場で生きていける手段を高じることのできる、非常に能力の高い生物ということに初めて気づかされました。また、その能力というのは一朝一夕にできるものではなく、長い進化の歴史の中で取捨選択を繰り返して獲得されたものだということに非常に面白さを感じました。これは夫と出会ったことにも影響されている感じはありますが、植物のその場での応答(生理・形態変化)だけでなくタイムスケールをともなった変化(分子進化・進化発生生物学)を知ることで、植物を体系的にとらえ、厚かましく言えば将来を予想することも可能であるというように考えるにいたりました。

このような植物の適応機構を明らかにする基礎研究の面白さを知り、そこにどっぷりはまりたいと考えた時期もありました。

しかし、やはり私の頭の片隅には食糧問題への貢献がちらつき、それを両立できないかと思い悩んでいるところです。いま考えているアイデアを現実のものとできれば、その思いも成就するかもしれません。最近その糸口が垣間見えた気がします。うんうんうなって、必死こいて頭悩ませて、やっと得られたほそーい糸ですが、それだけでも大きく前進したような気持ちです。まあこれからいろんな人に相談して、叩かれて凹まされるんだろうけど。。。けれど、そうやってアイデアを現実のものとしていきたいなぁと思っています。

取材の中で、「女性研究者」としてどう思うか?という形式の質問を受けました。あえて「女性」とつけるところに若干反発心をもつ時期もありましたが、それは女性研究者がマイノリティであるという現状を反映したものだと気付き、そういった表記が減るよう、すなわち女性研究者の数が増えるための活動には積極的に取り組んでいこうと考えを変えました。

少ないと言われてはいますが、日本人にも多くの素晴らしい女性研究者の先達がいらっしゃいます。そういった方々に追いつけるよう今後とも努力していきたいなと強く感じました。

将来を予測するにはなんとも不安定な業界ですし、自分がやっていける!という強い確信もありません。いつでも不安がつきまとって、それでいてスーパーお給料がいいわけでもない。けれどやりたいことを全うすることのできる自由度の高さ、柔軟なライフスタイルの構築が他の業界よりもいいところだと思うし、何よりそこにいる人々が目を輝かせて研究について語っているということそのものが私を捉えて離さない研究業界の魅力です。私もその一員となりたいし、自分がワクワクする研究成果を周りに知ってほしい、かつそれが世に出せたなら本望!そんなことを念頭に研究に邁進する所存です。

研究も家庭も育児も、一筋縄ではいきませんが、どれもとても楽しくてやりがいのあるもの。全部をうまく回そう!と意気込みもするけど、なかなかそうはいかないのが現実です。けれど、がむしゃら、かつ持続的に続けていきたいと思います。


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