2月26日に名城大学の学生さん18人と引率の先生2人に対して、私の所属する研究所を紹介する機会がありました。
ツアーに参加する学生さんは法学部、理工学部、農学部の1年生で(1人だけ2年生がいましたが)、フレッシュの塊と形容するのがふさわしく元気に溢れていました。
研究所ツアーの内容としては
・温室見学(20分)
・ラボ見学(15分)
・研究所の紹介&私の研究紹介&質疑応答(40分)
という感じ。
私の属する研究所は20人が楽々通れるほど大きくはないので、研究所内はサッと素通りするだけでしたが、それでも研究室見学というのは学部生にとっては新鮮だったらしく、皆いろんな箇所で驚きの声をあげてました。
18人の学生さんのうち、14人が女子学生で男子学生は4人のみ。私がM2の時に、ノースカロライナ州でのスタディツアーに参加した時も12人の参加者のうち、男子学生は3人で残りは女子学生でしたから、どこの大学においても女子学生の方が海外に出ることに対して意欲的なのかな、と感じました。
ところが質疑応答の際に出てきた質問には
・日本を出てアメリカに来たことを後悔していないか?
・出産を機にキャリアを諦めようと思ったことはないか?
というものがありました。
どちらもノーという答えだったのですが、そのような質問が学部1年生から出ることが意外でしたし、少なからず悲しくもありました。海外に出ることに対してマイナスなイメージが強いのかな、やっぱり出産というものはネガティブに捉えられているのかな、と。
確かに海外に出るにあたって大変なことはありましたが(ビザの取得とか)、海外で住むということを楽しみにしていましたし、後悔するほど大変なことには遭遇していません。就職の際に日本に戻りにくいよ、と言われたこともありますが、本格的に就職活動をしてはいないので、その憂き目にもまだ出会っていません。家族全員でカリフォルニア生活を満喫しているところです。
出産を機にキャリアを諦めようと思ったことは、実は一瞬ありました。産後のホルモンバランスの変動もあり、体力的にもかなり疲弊している時でしたので、「ああ、もうこのまま私は専業主婦になってもいいかも」という弱気な気持ちがぽろっと表に出た時でした。けれど祖母に「あんた何ばかなこと言ってんの。そんな暇があったら動きなさい!」と一喝され、あっという間にその妄想は潰えました。笑 そもそも6人の子どもを産んで、定年退職まで勤めた母親を持つので、一人産んだくらいで何バカ言ってんだ自分、とすぐに正気を取り戻すことができました。また、アカデミックの研究者というのはフレキシブルに自分の仕事時間を調整できますので、そこは出産をした場合の利点かなとも思います。
けれど、出産をした後はキャリアを諦める、というのが割と世間一般での認識なのかもしれないと、今回の質問を受け改めて考えさせられました。Natureの調査によると、アメリカにおいて、第一子を出産したあとにフルタイムのSTEM (Science, Technology, Engeneering, Mathmaticsの研究分野) 研究職から離れる人は女性で約43%にのぼるそうです。男性だと20%程度。アメリカでさえ(日本より男女平等が推進されていて、夫婦ともに働かなければ食べていけない(これはベイエリアだけか?)アメリカでさえ)約半数の女性がフルタイムの研究職を離れるということは日本においてはより高い割合で、女性が離職しているのではないのでしょうか。
また最近発表された調査(Women, Business and the Law 2019)によると、男女の平等が100%達成されている国はたった6カ国しかないとのことです。アメリカはヨーロッパ諸国に遅れをとって83.75というスコアでしたが、日本は79.38(世界平均は74.71)。この調査はビジネス分野で行われたものなので、大学という環境における男女平等を反映していないかもしれませんが、傾向として、日本の男女平等ランクはOECDのhigh income countriesの中でたいへん低いレベルにあると推察できます。
このような日本における女性の雇用機会の損失が、若い女子学生たちにも共通認識としてあり、今回の質問につながったのかもしれません。そのことが気がかりで少し悲しい気持ちだったのですが、夫に「でもマイナス面の質問がくるってことは真剣にその方向に進みたい(海外に出たい)という気持ちの表れじゃない?」と言われ、確かにそうかも、と考え直しました(単純)。
私はポジティブというかあまり何も考えていなかった方なので、海外に出ることイコールいろんな人と交流ができて楽しそう、としか思っていませんでしたが、色々な情報を獲得して、全てを精査した上で海外に行く選択肢をとる、という方が無難にも思えます。今回の研究所ツアーと自身の講演では、できる限り海外に行くことを推奨する、そのためにも私自身が海外で楽しんで生活していることを見せることを目標にしていました。
上記の質問に対してもできるだけポジティブに返答したつもりです。
今回のツアーをきっかけに海外に出てみようかな、という学生の方が増えるといいなと思っています。
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