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  • Kanako

2019年JPR論文賞受賞

更新日:2020年8月1日


先日、名大時代のボスから、Journal of Plant Research (JPR) から以下のメールが届いたよ、と連絡がきました。

「昨年JPRに出版されました芦刈先生の論文 "Sucrose affects the developmental transition of rhizomes in Oryza longistaminata” が、今年のBest Paper Awardに選ばれました。」

あしかりの字ちがーう!

ま、それはよくあることだし、おいといて。

なんと、昨年JPRに出版した地下茎の論文がBest Paper Award(通称JPR論文賞)に選ばれたとのことでした!

JPR論文賞:日本植物学会では公益社団法人日本植物学会賞のうちの一つとして,植物学の進歩に寄与する独創的な研究成果をJPRに発表した方に対して,JPR論文賞を授与しています.受賞論文の数は毎年若干数とし,受賞者は受賞論文の著者全員です.大会において各論文の代表者に賞状及び副賞が授与されます. (日本植物学会HPより引用)

年2本しか選ばれない論文賞にまさか私たちの論文が選ばれるとは... とても、とても嬉しいニュースでした。

この論文の内容をざっくり説明しますと、野生イネOryza longistaminataは地下茎で増殖するのですが、このイネを材料に用いて地下茎が地上に向く際の要因を突き止めた、というものです。地下茎というのは字面の通り、地下にある茎なのですが、ずっと地下に居続けるというわけではなくある時点から地上に向かって伸長する方向を変え、地上茎となります。そして地上茎の地下部からまた地下茎が伸長し... というサイクルを繰り返すことで、植物の生息域・バイオマスを無性的に増やしていくことで繁茂するという戦略をとっています。この地下茎から地上茎への性質の変化(専門的には相転換といいます)がどのような要因によって起きているのかを明らかにする、というのが私たちの大きな目的でした。そしてその要因の一つとして、植物の栄養源であるスクロースを突き止めました。スクロースは光合成によってできる産物であり、師管を通って各所に運ばれます。地下茎は地下にありますので、基本的にその成長は地上茎から輸送されてくるスクロースに依存しています。そこで私たちは親である地上茎からのスクロースの供給量が少なくなったポイントで、地下茎は「あ、そろそろ俺自立して光合成しなきゃ」とこれまでのニート生活をやめて地上に向かうのではないか、という仮説を立てました。そしてその仮説通り、スクロースを与えた場合には地上への角度の変化が抑えられ、屈曲に関わるような遺伝子群の発現も抑制されていることが示されました。

全然ざっくりじゃないですね。いやでも割とはしょってるか。

全くもって蛍光写真やW.B.などは出てこない、極めて生理学に特化した論文でした。

O. longistaminataは野生イネであり、モデル植物であるO. sativaとは異なり形質転換もできないため、なかなか分子生物学的な検証をするのが難しいという言い訳もあるのですが、生理学で言いたいことが言える論文に仕上がったのではないかな、という結構好きな論文の一つです。

また、この論文は初めて後輩とCo-First(共同筆頭著者)で書いた論文でした。この後輩は学部4年生から配属され、1年半しか研究室には所属していなかったのですが(ヨーロッパで修士コースに入るため旅立ちました)提案した実験をコツコツと積み重ねることができる子で、1回1回の結果をまとめ、一緒にディスカッションをしていました。そのおかげで、私がパイロット実験をしてこれはいける、と考えたアイデアと彼のたゆまぬ努力により、論文として形にすることができました。彼が旅立った後に結構重いリバイズもあり、出版までには少し時間がかかりましたが、去年出版することができました。

しかし論文賞を受賞するとは夢にも思っていませんでした。

後輩とともに形にできた論文は初めてでしたが、きちんと形にできた時、そして思いがけず賞をもらうこととなった時、嬉しくて飛び上がりそうでした。

別の後輩も4年生の時にO. longistaminataの地下部を水耕栽培により観察するということを可能にしてくれて、この論文のSupplemental Movieとして載せることができました。このように、学部生であっても丁寧に説明して、小さい成功を積み重ねれば応えてくれるし、思った以上の成果を出すこともある、ということをこの研究を通じて学びました。

今も、後輩とやってきた地下茎の仕事、そして芒の仕事の総まとめをしているところです。

時間がかかってしまって申し訳ない気持ちでいっぱいですが、卒業して会社員として働く彼らにも届くよう、なんとか形にして世に出したいと思います。

追記:2019年9月にJPR論文賞の賞状と記念品をいただきました。


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