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Kanako

笑いとプレゼン

更新日:2020年8月19日


9月26日に研究所内のRound Tableというランチ兼セミナーの場で、新人ポスドクとして発表をしました。内容はこれまで研究してきたことということで、前回の発表者を参考に、学部時代から博士課程までの研究+カーネギーでの研究計画を話しました。

この内容の話をするのは現所属ラボに対しては2回目。また、海外だとプレゼンにジョークを入れる人が多いので、できるだけ面白くなるような発表を心がけ、思いのほか評判が良いものとなりました。発表後、Facebookで「発表ウケました〜よかった!」と投稿したら、結構たくさんの"イイね"がもらえたので、ひょっとしてみんなウケるプレゼンって興味あるかな、と思いブログ記事を書くことにしました。(興味なければスルーしてください)

以下に面白い研究発表をする試みを記します。

1. ウケたい!という動機

そもそもなぜウケるプレゼンにしたかったのか、というと、笑いの起きるプレゼンというのは記憶に残りやすいと考えるからです。研究内容が多少難しくても、面白いな!思うことができれば、あの人の発表は面白かった、と記憶します。それは確実にポジティブなイメージです。すでに渡米して半年が経ったとはいえ、まだ話したことが無い人も多くいます。なのでプレゼンで良いイメージを残すことで、のちの話すきっかけを作りたいと思いました。もちろんそれで研究内容も面白い!となれば最高ですが。

2. 笑いの効果

笑いがあるとポジティブなイメージが記憶に残る、というだけではなく発表を飽きさせないという効果があります。話者が淡々としていると『わっけわかんね、ねむ。寝よ。』という人も出てくるかもしれません。しかし発表の合間に笑えるところがあると、集中を保って最後まで聞いてくれます。これは大きな効果だと思います。また発表中、リラックスした雰囲気にできるということも挙げたいです。聴衆は百戦錬磨の研究者軍団ですから、みんな発表内容に穴は無いかと探しています(大げさ)。しかし、笑いによって会場の空気が和らぐことで、話者にとって発表しやすい空間となり、トゲトゲした質問は来にくくなります(ある時もあります)。さらにこのような空間では「くだらない質問もしやすいな」という空気になって、いろんな質問が出て来ます。実際、質問者が『これは分野の人には常識でつまらないかも。。』など思っていても、話者にとっては異なる分野の人からの質問は大歓迎ですし、むしろそこは思い至っていなかった!という新たな発見にもつながることもあります。なのでたくさんの質問が出るような空気にすること、つまり笑いを適度に取り入れることはとても良いことだと考えています。

3. 研究発表で笑いはどういった時に起きるか?

私の考える「笑い」は一言で言えば「ギャップ」です。自分の予想とは違っているものが出てきた時、それは驚きと同時に笑いを誘います。出てきたものがあまりにも予想とかけ離れているとそれを通り越して「理解不能」になるかもしれません。なので笑いをもたらす「ギャップ」は、自分は予想していなかったけど説明されたら理解可能、なものだと考えています。

では「研究発表で笑いが起きる時」というのはどういうものでしょうか。色々あるのですがうまく言語化できるものとしては①話者に対して親近感を持てた時、②なんらかの裏話が出た時、③研究への思いが爆発していることが見てとれる時、かと思います。

研究発表、という言葉自体が硬い感じがしますが、1つか2つ個人的な内容を混ぜるだけで一気に心理的な距離が縮まり、親近感をもてます。これは研究者という硬いイメージと、話者も自分と同じただの人、ということのギャップかと思います。例えば、私ははじめに自分の写真と家族写真を見せてこう述べました。

「自分は食べること、パーティーをすることが好きだ。

 けれど小さい息子がいるので5時には迎えにいかないといけない。

 なので5時前のパーティーであれば誘ってくれ。」

これはめっちゃウケたし、その後パーティーに誘ってもらえました(笑)。

2番目のなんらかの裏話、というのは研究者寄りの話になりますが「実はこれ、こうだったんですよね」という暴露は、まじか!とか、あるある〜!という驚きや共感を引き出し、それが笑いにつながります。今回のプレゼンでは、竹林を掘り起こして地下茎で埋め尽くされている様子を見せたのですが、実はこれ2時間で終わると思って始めたら2日かかったんですよね、と言ったらざわざわしました。あ、別に研究者寄りでもなんでもなかったですね。。。科研費の話とか混ぜれる人だと、研究者寄りになります、きっと。

3番目の研究への思いは爆発しているというのがミソです。みんな自分の研究が面白いと思ってやっているのですが、さらにそれが抑えきれないほどの情熱と愛に溢れていると、例えそれがかなりの説明口調だったとしても、なんというか可愛くて笑っちゃいます(私だけ?)。これは多分話している本人には自覚の無い話で笑われる筋合いもないかもしれませんが、いい意味での笑いです。私は地下茎と芒、というあまり他の人がやらないマイナーな器官の研究をしていたのですが「マイナーだけど、めっちゃ面白いよこれ!どう?」という勢いだけはあったので、みんな微笑んでくれていました(多分)。

4. 研究発表に笑いを取り入れるその他のアイデア

そもそも自分が聴衆であるとき、初めの段階で『あ、この人のプレゼンでは笑っていいんだな』と判断することがあります。それは最初の一言めにジョークを持ってくる場合です(いわゆるアイスブレイク)。「発表途中でも質問してくださいね」と言われる安心感に似ています。はじめはタイトルスライドが写っているだけですが、聴衆を飽きさせないため、また話のネタを作るために基本的にタイトルスライドには写真か話のネタになるものを仕込むようにしています。

英語の拙さが逆にウケを誘った場面もありました。野生イネのO. longistaminataが地下茎によって増殖しカメラの方向に向かってくる動画を流した時に、説明が追いつかず、ちょっと沈黙した後「...like a monster」と言ったことで爆笑がおきました。語彙力の無さが逆にウケました。

最後に必要なのは、自分が面白そうに話す、ということかと思います。

これは前ボスを大いに参考にしていますが、彼はいつでも(日常生活でも)ラボに笑いをもたらそうと日々起こったことをおもしろ可笑しく話してくれました。その話している様子は自分がまさに今その場面にいるような、彼自身が話すことを楽しんでいる様子がよく伝わってくるものでした。自分が楽しんで話していることは相手にも伝わり、相手もなんだか楽しくなってくるものです。これは3番目に挙げた研究への思い、とも通じるものかと思います。

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以上、つらつら書きましたが、全員がウケる発表を目指すことはないと思います。

私は自分自身がリラックスしたいし、笑いのある空間が居心地いいのでウケる発表を心がけていますが、キレッキレの発表内容でみんなが圧倒する発表や、淡々としかし情熱を持って発表するスタイルもあります。むしろ研究内容だけで「すごい」と思わせられる発表は本当に研究のできる人だと思いますし、できるものならそうなりたいものです。しかし自分に合うスタイルでの発表が、話者にとっても聴衆にとっても良いものであり、私は両立を目指したいと思います。

発表は無事終わり、読み通り終わってから何人かに声をかけてもらって話したことの無い方々とも話すことができました。

やっぱり「あなたの発表とても面白かったよ!」と言ってもらえるのはとても嬉しいものですね。

今後も発表の腕を磨きつつ、研究もしっかり進めていこうと思いました。

英語も上達したいな〜

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