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Kanako

いつ産むべきか問題

更新日:2020年8月20日


As a female wanting to pursue academia, how do you determine the best time to have children?

(女性でアカデミア研究者としてのキャリアを邁進したい場合、どのようにして子供を産むタイミングを決めるのがいいでしょうか?)

この質問は以前参加したセミナーで一人のポスドクさんが提示した質問でした。

前回のブログにも書きましたが、このセミナーでは一人1枚A0サイズの紙をもらい、その一番上に質問を書き、その下に他の人がコメントを書いていく形式でした。

いろんなコメントがこの質問には寄せられていましたが、いくつかの例を抜き出します。

・Talk to Postdocs who already have kids. (すでに子持ちのポスドクと話す)

・Maybe at the beginning of postdocs? (ポスドクを始めた時期がいいのでは?)

・After general female PIs. (影響力のあるPIになってから)

・There is "no" perfect timing. You can't will make it work whenever you decide to do it.

(完璧なタイミングなんて無い。子供を産むと決めたときにいつでもそうできる訳ではない。)

・or you could say that it's always right time.

(か、いつのタイミングだって適切だと言える。 ※上記とは違う人のコメント)

私の周りにも、博士学生の時に出産された方、ポスドク3年目に出産された方、PIになってから出産された方など、色々なケースがあります。しかし、その中でも日本の国立大学教授・准教授になられている女性研究者のみに限ると、未婚、出産経験無し、もしくは助教or准教授などポストを取られてから出産された方の3パターンです(n=9)。すなわちこれまでの社会ではポスドク時代には子どものいない方がより研究能力を伸ばすことができたということを示唆しているかと思います(この部分に関しては私の周囲の話だけなので、ポスドク時代に出産してすでに准教授・教授だよ!という例がありましたらどうぞお教えください)。

私自身はポスドク1年目で出産したわけですが、その場合のメリット・デメリットを以下に挙げてみました。

メリット:

・子供が先天性遺伝子疾患になる可能性が低い

・親の体力がある

デメリット:

・研究に割く時間が制限される

・若手(同世代)と飲みに行くことができない

メリットの内容を以下に詳述します。

男性は加齢にしたがい精子への変異頻度が上昇し(ただしこの変異は子に疾患の起こるリスクはほとんど無い中立的な変異であるそうですが)、また男性女性ともに加齢にしたがって子が先天性遺伝子疾患になるリスクが高まると言われています(どの遺伝子への変異が原因かはまだ明らかでは無い)。私たちにとってこの点は子供をもうけるタイミングを考える上で大きなポイントでした。また、どちらかに問題があって不妊体質であった場合、治療が必要になるかもしれません。その場合でも両親の年齢が若い方が成功率は高いと聞きます。

さらに、年齢が若いほど親の体力があります。恥ずかしながらほんとにこれを痛感しています。普段から鍛えていれば年齢が上がってもへっちゃらなのかもしれませんが。この前息子と海に遊びにいったら、3時間浜辺で過ごしただけで、私はバタンキュー。息子より先に寝てしまいました。。。

デメリットももちろんあります。

研究に割く時間は子供をデイケアに預けている間のみ。もしくは子が寝たあとになります。

しかし、先述したように普段の研究+帰宅後の育児で私はヘロヘロなので子どもより先に寝てしまうことも。。。そうでなくとも寝かしつけをしていると大抵一緒に寝落ちしてしまいます。なので、研究に割ける時間はやはり子のいない時間のみとなってしまいます。

以前までは日中に実験をし、夜間や休日に書き物、プレゼンスライドの作成、論文読みなどをしていたのですが、これができなくなってしまいました。気を強く持って、必死で夜中に起きる努力をするべきなのかもしれません。。。もしくは作業効率を上げる。

また、私の所属する研究所は未婚の同世代のポスドクがたくさんいます(研究所なので学生はあまりいません)。そんな彼らと自由におしゃべりできるのはランチタイムかアフターファイブ。しかしランチタイムは実験を組んでいることもあり30分ほどしか時間がなく、アフターファイブは保育園のお迎えに行かねばなりません。なので、日中に自分の実験(や書き物、スライドなど)の予定をタイトに詰めていると全然周りと交流する時間がなくなるのです。カーネギー研究所にいる人々はみな研究に対するモチベーションが高く、多くの技術・知識を持ち合わせています。そんな彼らと交流できる機会がほとんど無いのはとてもとても悲しい!!これは大きなデメリットだと思っています。

他にも出張や学会に行きづらい、というのも挙げられるかもしれませんが我が家はそこに関しては制限を設けないようにしています。なので出張期間中はフリー!!夜も時間を気にせずお出かけできます。最大の問題は私には出張が無いということ。。。夫は年間2ヶ月くらい出張してるのに。笑

少し話題が逸れましたが、表題の「女性 x アカデミア研究者→どのようにして子供を産むタイミングを決めるのがいいか」という問いについては、もしこれが少しでも早く独立してPIになるにはという意味を含むのであれば、PIになったあとに産むのがいい、とサジェスチョンできます。なぜなら研究にかけられる時間・論文を書く時間が大いに削られますし、学会に参加して発表する機会も減るからです。論文を書いて業績を上げなければいけないポスドクの時期にそのような時間が無くなることは大きな痛手ですから。しかし、その意味を含まないのであれば、当人の自由意志かと思います。おっと突き放しすぎましたかね。けれど任期がスタートしてすぐ、というのはあまりお勧めできないと付け加えておきます。私のポスドク1年目は学位を取ったラボだったので、すべてのことを掌握していましたし、ボスとの関係もツーカーだったので可能でした。もし新しいラボに移るのであれば、着任して1年ほどしてからの方がいいのではないかと思います。

(12/28追記)また、「PIになってから子を作ろう」と思っていても、いつPIになれるかはわかりません。実力も大事ですがそれ以上に運とタイミングも大事だということを耳にするアカデミア業界ですから、PIになれるのは3年後かもしれませんし10年かかるかもしれません。そうなると妊娠出産の時期もズルズルと延び、最終的に「もう子供は諦めるか。。。」という気持ちになってしまうかも。

言えることは、親になったら子の責任は完全に親にあるので(受精した時点から!)、父親母親になる君達が納得できる理由をつけられればどの時期も正解になると思います。妊娠・出産・育児は始まってみないとほんとどんなものかわからないです。育児本や育児ブログで前情報を仕入れていたとしても、子どもの性格 x 自分の体調 x 自分の仕事 x 周囲の環境、と複数の要素によってその大変さは変わるので、紹介されているケースが自分の子にも当てはまるとは限らないのです(あとから「あーうちもこうだわ」と照らし合わせることはできます)。なのでうまくいかなくて凹むことも、こうなるとは思ってもみなかったとくよくよすることもあるかもしれません。そうなった時に「いや、でもこうこうこういう理由でこの子を産むと決めたんだ。悔いなし。」と思える確固たる理由づけがあると、そのような後悔に当てる時間が短縮できます。

うちだと(1)先天性遺伝疾患になりにくい、(2)不妊体質であった場合にかかる時間、の二つが大きな決め手となりました。保育料が高すぎると知った時と、周囲の若手と飲める機会がほぼ無くて凹んだ時、これらの理由が支えになりました。あと子どもの笑顔。

しかしこのような問いが出るのはやはり女性だからなのでしょうか。

学会でもネットでも出産育児によるキャリアの不安を口にするのは女性ばかりな気がします。

男性も少しは心配しろよ、というわけではなく、このような不安がなくなるような社会になるといいなと思います。どのようなシステムができればいいのだろうか。。。

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